前センター長あいさつ

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私たちを取り巻く自然、社会、宇宙が、どのようなものであるのかを知ろうとしたり、また、なぜそうなのかを理解しようとすることは、私たちの根源的な欲求であり、同時に、人間の知的活動の出発点です。 世界を捉える上で、1920年代にハッブルやルメートルらにより発見された宇宙膨張は、大きなインパクトを持っています。 それまでは、様々な現象を入れる器としての宇宙そのものは、静的で不変なものとして扱われて来ました。 だからこそ、時間や場所によらない様々な法則が存在し、それを元にして、最も安定した状態や永続的な運動の組み合わせとして、世界の姿や存在理由を理解できるだろうと想像されていました。 しかし、私たちが爆発しているものの上で生きているのだということが明らかになり、それまでの静かな宇宙の概念が一変されました。 その一つの帰結として、我々が見ている宇宙の姿や、そもそも我々がどうして存在しているのかなどの説明も、安定性や永続性だけでなく、 宇宙がその誕生以来経験してきた様々な劇的な出来事がどのようにダイナミカルに組み合わさり、その結果として何をもたらしているかの観点でも理解されなければならなくなりました。 これにより、これまで仮説でしかなかった様々なものの原因やその実現プロセスが解明されつつあります。 それらをさらに推し進め、宇宙史の全貌を理解し、これから先に何が起こるかをより正確に予見するためには、宇宙史の個々の出来事を理解するだけでなく、それらが全体としてどのように関連し、どのような原理で進化しているのかを探求する必要があります。

宇宙史研究センターでは、ビッグバンから生命の出現まで、宇宙の歴史と進化の一貫した理解をめざして、理論・実験や素粒子・宇宙・原子核物理学などの既存の分野の枠を超えた融合的体制のもとで、研究を推進しています。 また、各分野で活発に進められている国際的な先端共同研究をこのセンターで連結し、宇宙史の国際的研究拠点として機能するハブの構築を目指しています。 その為に、CAや国際テニュアトラック、海外教育・研究ユニット招致など、筑波大学が国際的研究大学への展開をめざして導入した様々な制度をフルに活用して、分野と国、機関を大きくまたがった研究体制の構築を進めています。 これにより、劇的な展開が予想される宇宙史研究を先導する、大きな視野と高い視点に支えられた自由な発想の研究が共鳴する場を提供していきたいと考えています。

2017-2019年度 宇宙史研究センター長
金谷和至